後継者不在による倒産が急増 新型コロナの影響も追い打ち
2021/04/02
中小企業における後継者不在の問題が深刻化している。東京商工リサーチが昨年11月に公表した2020年「後継者不在率」調査によると、中小企業で後継者が決まっていない「後継者不在率」は57.5%となり、前年より1.9ポイント上昇した。
この調査は、東京商工リサーチの企業データベース(390万社)のうち、2018年以降の後継者に関する情報が蓄積されているデータから18万5247社を抽出・分析したもの。事業実態が確認できた企業のうち、後継者が決まっていないのは10万6573社(57.5%)だった。
代表者の年齢別でみてみると、不在率が最も高いのは、後継者を選定する必要に迫られていない30歳未満の94.6%だったが、問題なのは、事業承継が喫緊の課題となっている60代以上の不在率だ。60代は40.4%、70代が29.1%、80歳以上でも23.5%となっており、経営者が事業承継の適齢期に差し掛かっていても、多くの企業で後継者が決まっていない実態が改めて浮き彫りになった。一般に数年かかるとされる事業承継の準備期間を加味すると、早急な対応が「待ったなし」の状況といえる。
それを裏付けるデータがある。東京商工リサーチが実施した『後継者難』の倒産状況調査によると、2020年1月~11月の「後継者難」倒産は340件(前年同期比45.2%増)に達しており、年間(1月~12月)最多記録だった2015年の279件をすでに大きく上回っている。
こうした状況に追い打ちをかけたのが、新型コロナの影響による業績悪化だ。後継者が見つからない中、新型コロナによって事業の先行きに不安を感じ、会社を続ける意欲を失ってしまう経営者が今後増えてくることが考えられる。東京商工リサーチでは、「新型コロナで経営体力を削がれた企業は多いだけに、資金支援だけでなく、後継者問題を抱える企業には事業承継や転廃業などの支援が急がれる」と指摘している。
後継者不在の10万6573社に中長期的な承継希望先を尋ねたところ、「未定・検討中」が5万7253社(構成比53.7%)で、事業承継の方針が明確でない、あるいは計画できない企業が半数を超える結果となった。
一方、中小企業の間でも事業承継の手段としてM&Aを選択するケースが増えつつあるが、今回の調査によると「会社を売却・譲渡の方針」は206社(同0.1%)、「外部からの人材招聘と資本受入の方針」は128社(同0.1%)にとどまっており、多くの経営者が後継者不在に頭を抱えているものの、第三者への承継へのニーズは依然として低いことがうかがえる。
2019年の「休廃業・解散」は4万3348社を記録したが、2020年は1月から8 月の時点で3万5816件(前年同期比23.9%増)に達している。このままのペースが続けば、初めて年間5万件を超える事態となる。
後継者不在の問題を解消できなければ、日本を支える匠の技や高度な技術力を保有する中小企業の存続が危ぶまれる。経営者の高齢化や生産年齢人口の減少は今後さらに進んでいくだけに、日本経済の持続的な成長を維持するためにも事業譲渡やM&Aを含んだ事業承継の促進が一段と求められるところだ